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チャートデータム

海図作成時の基準となる水位で、通常は平均最低潮位またはそれ以下の水位を基準として設定される測量基準面である。

チャートデータムとは

チャートデータム(Chart Datum)は、海図作成時の基準となる水位のことで、海洋測量における最も重要な基準面の一つです。航海安全のため、水深表示の基準として機能し、国際的な海図作成基準によって定められています。

定義と役割

チャートデータムは、海図上に表示される全ての水深値の基準となる水平面です。これは通常、平均最低潮位(Mean Lower Low Water: MLLW)またはそれ以下の水位に設定されます。この基準を使用することで、最悪の潮汐条件下でも安全な航行が確保されるという原則に基づいています。

国際水路機関(International Hydrographic Organization: IHO)の基準では、チャートデータムは各国の沿岸地域における潮汐特性を考慮して、最も低い予測潮位と同じかそれ以下に設定することが推奨されています。

技術的詳細

潮位基準との関係

チャートデータムは潮位観測に密接に関連しています。正確なチャートデータムを決定するには、数年間にわたる継続的な潮位観測データが必要です。この観測により、平均最低潮位や他の潮位統計値が算出されます。

潮汐基準面には複数の種類があります:

  • 平均海面(Mean Sea Level: MSL):長期間の潮位の平均値
  • 平均高潮位(Mean High Water: MHW):高潮時の平均水位
  • 平均最低潮位(Mean Lower Low Water: MLLW):最低潮位の平均値
  • 最低潮位(Lowest Astronomical Tide: LAT):天文学的に予測される最低潮位
  • 測定方法

    チャートデータムを確立するには、以下のプロセスが必要です:

    1. 潮位観測ステーションの設置:沿岸の複数地点に潮位計を設置し、継続的にデータを収集します。

    2. データ収集期間:通常18.6年の月球周期サイクルを含むことが理想的ですが、実務的には最低でも1年以上のデータが必要です。

    3. 統計処理:観測データから潮位基準値を計算し、国家測地基準系との接続を確認します。

    海洋測量への応用

    海図作成

    チャートデータムは海図上の全ての水深表示の基準となります。沿岸海域の水深測量(音響測深)を実施する際、取得した生の水深データは潮位補正を通じてチャートデータムに変換されます。

    例えば、ある地点で音響測深により50メートルの水深が記録された場合、その時点の潮位が1メートルであれば、チャートデータムからの水深は49メートルとして海図に記載されます。

    航行安全への影響

    チャートデータムをより低い基準に設定することで、船舶の座礁リスクが低減されます。最悪の潮汐条件下でも表示された水深値が実際の水深以下にならないため、航海者は安全な航行計画を立てられます。

    関連する測量技術

    GNSS水準測量との連携

    近代的な測量では、GNSS(衛星測位)による水準測量がチャートデータムの確立に使用されます。これにより、複数の潮位観測ステーション間の高さ関係を高精度で決定できます。

    音響測深機器

    海洋測量では、シングルビーム測深機やマルチビーム測深機がチャートデータムに基づいて校正されます。これらの機器からのデータは自動的に潮位補正され、海図作成用のデータセットとなります。

    実務的な例

    港湾開発プロジェクト

    新規港湾の建設時には、正確なチャートデータムの設定が不可欠です。防波堤の高さ決定や埠頭の設計において、チャートデータムに基づいた潮位マージンが適用されます。

    沿岸インフラ整備

    堤防や護岸工事では、チャートデータムを基準とした設計水位が使用されます。異なる海域間でも統一された基準を使用することで、設計の整合性が保証されます。

    国別の基準

    各国のチャートデータムの設定は異なります。日本では、平均最低潮位に基づいたチャートデータムが採用されており、国家水準基準点との接続により、垂直基準系との統一が図られています。

    現代的課題

    気候変動に伴う海面上昇やデータムの再評価が、現代の海洋測量における重要な課題となっています。既存のチャートデータムの妥当性を検証し、必要に応じて更新することが求められています。

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